【2026年度版事例】地方の食品工場が特定技能外国人を3名採用し、生産ラインが安定した話

「求人を出しても応募が来ない」「パートさんが辞めるたびに生産ラインが止まる」――地方の食品工場を経営する方なら、こうした悩みは日常茶飯事ではないでしょうか。飲食料品製造業の有効求人倍率は3.05倍(2024年1〜3月・厚生労働省「職業安定業務統計」)と全産業平均の約2.5倍にのぼり、特に地方では応募者ゼロの月が続くことも珍しくありません。本記事では、ある地方の食品工場が特定技能外国人3名を採用し、慢性的な人手不足を解消して生産ラインを安定稼働させるまでの過程を、準備段階から定着支援まで時系列で追いかけます。制度の最新動向や費用感、現場で起きたリアルなトラブルとその対処法まで、これから外国人採用を検討する経営者・人事担当者に向けて実務レベルで解説します。

Contents

地方の食品工場が直面する人手不足の深刻度

まずは、なぜ地方の食品工場がここまで人手不足に苦しんでいるのか、データで確認しておきましょう。背景を正確に把握しておくことで、特定技能制度を活用する意義がより明確になります。

数字で見る飲食料品製造業の人手不足

厚生労働省の「職業安定業務統計」によれば、飲食料品製造業の有効求人倍率は2023年9月時点で3.15倍を記録しました。2024年1〜3月の直近データでも3.05倍と高止まりが続いています。全産業平均が1.2〜1.3倍前後であることを考えると、食品製造の現場がいかに人材を獲得しにくい状況にあるかがわかります。

地域別に見ると格差はさらに顕著です。たとえば香川県では飲食料品製造業の有効求人倍率が7.64倍、福井県では5.61倍という数値が報告されており(厚生労働省「職業安定業務統計」2021年度)、地方の食品工場が「求人を出しても人が来ない」と嘆くのは決して誇張ではありません。製造業全体の就業者数も過去20年間で約157万人減少しており、構造的な人口減少と若者の製造業離れが同時に進行しています。

人手不足が経営を直撃するリスク

人手不足は単なる「忙しさ」の問題にとどまりません。2025年度上半期(4〜9月)に人手不足を要因とする企業倒産は214件と過去最多を更新しました(東京商工リサーチ調べ・2025年10月発表)。食品工場においては、人員不足により生産ラインの一部を停止せざるを得なくなるケースが頻発しています。受注があるのに製造できない、納期に間に合わない、既存の従業員に過度な負荷がかかり離職が連鎖する――こうした悪循環に陥る前に手を打つことが、経営存続の鍵を握っているといえます。

なぜ「特定技能」が食品工場の救世主になり得るのか

外国人の雇用にはさまざまな在留資格がありますが、食品工場の生産ラインで即戦力として働ける在留資格は限られています。その中で、特定技能「飲食料品製造業」は、食品工場にとって最も実用的な選択肢の一つです。

特定技能「飲食料品製造業」の基本

特定技能は2019年4月に創設された在留資格で、深刻な人手不足に対応するため、一定の技能と日本語能力を有する外国人に就労を認める制度です。「飲食料品製造業」はその対象分野の一つであり、酒類を除く飲食料品の製造・加工・安全衛生に関する業務に従事できます。具体的には、原料の処理、加熱・殺菌、成形・充填、包装・検品、清掃・メンテナンスなど、食品工場の生産ラインにおける幅広い作業が含まれます。

2024年3月29日の閣議決定により、対象事業所がさらに拡大され、食料品スーパーマーケットや総合スーパーマーケットの食品製造部門でも受入れが可能になりました。食品製造の現場にとって、活用の幅がますます広がっています。

飲食料品製造業は特定技能で最大の受入れ分野

出入国在留管理庁が公表する統計によれば、2025年6月末時点で特定技能の在留外国人数は全体で33万6,196人に達しています。そのうち飲食料品製造業は8万4,892人(全体の25.3%)と、全16分野の中で最多の受入れ人数を誇ります。2番目に多い介護分野の5万4,916人(16.3%)を大きく引き離しており、食品製造の現場で特定技能外国人が不可欠な存在になりつつあることがわかります。

2024年4月からの5年間で、飲食料品製造業分野の受入れ見込み人数は13万9,000人と設定されており(出入国在留管理庁・2024年4月発表「特定技能の各分野における向こう5年間の受入れ見込数」)、今後もさらなる受入れ拡大が見込まれています。

事例で追う ― 地方食品工場A社が3名採用するまでの全工程

ここからは、地方に立地する食品工場の事例をモデルケースとして、特定技能外国人3名を採用し、生産ラインが安定するまでの流れを時系列で追っていきます。事例は複数の実在する成功事例を参考に構成した典型的なモデルケースであり、特定の企業を指すものではありません。

背景:パート従業員の離職で生産能力が低下

A社は、東北地方にある従業員約40名の冷凍食品製造工場です。主力製品は業務用の冷凍惣菜で、地元のスーパーや給食センターに納品しています。数年前から慢性的な人手不足が続いており、特に夜勤シフトと冷凍庫での作業を担当するパート従業員の確保が困難になっていました。2023年には主力パート3名が相次いで退職し、生産ラインの稼働率が約60%まで低下。受注の一部を断らざるを得ない状況に追い込まれていました。

ハローワークへの求人掲載、地元求人誌への広告出稿、時給の引き上げなど考えられる対策を講じましたが、応募はほぼゼロ。そこで、同業の知人から特定技能制度について聞いたA社の社長が、外国人採用の検討を本格的に始めました。

ステップ1:情報収集と登録支援機関の選定(約1か月)

A社がまず取り組んだのは、特定技能制度の基本的な仕組みを理解することでした。出入国在留管理庁のウェブサイトや農林水産省の飲食料品製造業分野に関する資料を確認し、受入れに必要な要件を洗い出しました。その上で、外国人材の紹介と義務的支援の実施を委託する「登録支援機関」の選定に入りました。

登録支援機関の選定では、飲食料品製造業での紹介実績があること、対応言語にベトナム語やインドネシア語が含まれること、地方の工場への訪問サポートが可能であることを重視しました。複数の機関から見積もりを取り、支援委託費は1名あたり月額3万円前後で落ち着きました。

ステップ2:候補者の選考と技能測定試験の確認(約2か月)

登録支援機関を通じて、ベトナム在住の候補者リストが提示されました。A社は書類選考の後、オンライン面接を実施。日本語能力(日本語能力試験N4相当以上)と、飲食料品製造業の技能測定試験の合格を確認したうえで、3名の採用を決定しました。

飲食料品製造業の特定技能1号技能測定試験は、一般財団法人外国人食品産業技能評価機構(OTAFF)が実施しています。試験は学科と実技で構成され、合格基準は100点満点中65点以上です。国内外で年に複数回実施されており、近年は海外試験の開催地も増加しています。なお、技能実習2号を良好に修了した方は、技能測定試験と日本語試験の両方が免除されるため、即座に特定技能への移行が可能です。

ステップ3:在留資格の申請と入国準備(約2〜3か月)

採用決定後、在留資格認定証明書の交付申請を出入国在留管理庁に行いました。申請にあたっては、雇用契約書、1号特定技能外国人支援計画書、会社の登記事項証明書、決算書類、特定技能協議会への加入証明など、多数の書類が必要でした。

書類準備で特に注意が必要だったのが「食品産業特定技能協議会」への加入です。飲食料品製造業で特定技能外国人を受け入れるすべての企業は、農林水産省が事務局を務めるこの協議会に加入する義務があります。加入手続き自体はオンラインで完結しますが、申請から承認までに2〜4週間かかるため、早めの対応が求められます。

在留資格認定証明書の交付までは約1〜2か月を要しました。証明書を受け取った後、在外公館でのビザ発給手続きを経て、3名が入国したのは採用決定から約4か月後のことでした。

ステップ4:住居の確保と生活環境の整備(入国前に完了)

A社は、工場から自転車で10分の距離にある3LDKの賃貸アパートを法人名義で契約し、3名の共同住居として用意しました。家賃は月額6万円で、1名あたり2万円を給与から控除する形としました(借上げ費用÷入居人数の原則に従い上限内)。敷金・礼金・仲介手数料はA社が全額負担しました。

居室面積は3部屋合計で約27㎡あり、1人あたり9㎡と特定技能の基準(7.5㎡以上)を十分にクリアしています。入居前に、冷蔵庫・洗濯機・電子レンジ・布団セット・Wi-Fiルーターを設置し、ベトナム語で表記したゴミ出しカレンダーと生活ルールシートを各部屋に掲示しました。

ステップ5:入国後の生活オリエンテーション(8時間以上)

3名が来日した翌日から、登録支援機関のベトナム語通訳者を交えて生活オリエンテーションを実施しました。所要時間は合計約10時間で、2日間に分けて行いました。内容は、住居のルール(ゴミ分別・騒音マナー・火災時の避難経路)、市役所での転入届・国民健康保険の加入手続き、銀行口座の開設、交通ルール、病院のかかり方、緊急時の連絡先(110番・119番の使い方)など多岐にわたります。

特に効果的だったのは、実際にゴミ集積所まで一緒に歩いて分別の実演をしたことと、近隣住民への挨拶回りを初日に行ったことです。顔を合わせることで近隣住民の不安が解消され、入居後のトラブル防止につながりました。

生産ラインが安定するまでの現場の工夫

住居や手続きが整った後、いよいよ生産ラインでの勤務が始まります。しかし、外国人材を「配置して終わり」では決して生産性は上がりません。A社が生産ラインの安定化に至るまでに行った現場レベルの取り組みを紹介します。

多言語マニュアルと動画教材の整備

A社では、既存の作業マニュアルをベトナム語に翻訳し、さらに重要な工程については動画マニュアルを作成しました。動画は作業手順をスマートフォンで撮影したシンプルなもので、字幕にベトナム語と「やさしい日本語」を併記しました。動画マニュアルの制作費用は外注で約15万円でしたが、口頭での指示だけでは伝わりにくい衛生管理の手順や機械の操作方法を正確に共有できるようになり、教育にかかる時間を大幅に短縮できました。

日本人従業員への事前説明と「バディ制度」

外国人材を受け入れる前に、A社は全従業員を対象とした説明会を開催しました。特定技能制度の仕組み、なぜ外国人を採用するのか、どのような業務を担当するのかを率直に伝え、不安や疑問に一つひとつ回答しました。「自分たちの仕事が奪われるのでは」という懸念に対しては、「人手不足で止まっていたラインを再稼働させるための採用であり、既存の従業員の負担を軽減するのが目的だ」と明確に説明したことで、大半の従業員が前向きに受け止めました。

さらに、日本人の先輩従業員1名を各外国人のバディ(相棒)として配置する「バディ制度」を導入しました。バディは作業指導だけでなく、休憩時間の声かけや生活面の相談役も兼ねます。バディには月額5,000円の手当を支給し、役割と責任を明確にしました。この制度により、外国人が「わからないことを誰に聞けばいいかわからない」という状況を防ぎ、職場への早期適応を促進することができました。

段階的な業務範囲の拡大

入社直後から全工程を任せるのではなく、最初の1か月は包装・検品ラインに配置し、基本的な作業と衛生ルールの習得に集中させました。2か月目からは加熱・殺菌工程にも携わらせ、3か月目以降は原料の下処理から完成品の出荷まで一連の流れを担当できるようにしました。段階的に業務範囲を広げることで、本人の自信と周囲の信頼が同時に醸成され、3か月後には3名とも独立して作業を回せるレベルに達しました。

成果:稼働率60%から95%へ回復

特定技能外国人3名が戦力として定着した結果、A社の生産ラインの稼働率は採用前の約60%から約95%まで回復しました。断っていた受注を再び受けられるようになり、売上は前年比で約20%増加。既存の日本人従業員の残業時間も月平均15時間から5時間に減少し、職場全体の士気が向上しました。

かかった費用のリアルな内訳

「外国人採用にはお金がかかる」というイメージを持つ経営者は多いですが、具体的にいくらかかるのかを把握している方は意外と少ないものです。A社のケースをもとに、特定技能外国人3名の採用にかかった費用の内訳を公開します。

費目 金額(3名分) 備考
人材紹介料 約90万円 1名あたり約30万円(登録支援機関経由)
在留資格申請の行政書士費用 約30万円 1名あたり約10万円
渡航費(航空券) 約15万円 1名あたり約5万円(ベトナム→日本)
住居の初期費用(敷金・礼金・仲介手数料) 約18万円 3LDK 1室分
家具・家電・生活用品 約20万円 冷蔵庫・洗濯機・電子レンジ・布団等
登録支援機関への委託費(年間) 約108万円 1名あたり月額3万円×12か月
マニュアル翻訳・動画制作費 約15万円 外注
初年度合計 約296万円 (2年目以降は委託費+更新費用のみ)

初年度は約300万円弱のコストがかかりましたが、2年目以降は登録支援機関への委託費と在留期間更新の手続き費用が主な支出となり、年間約120〜130万円程度に落ち着きます。一方で、生産ラインの稼働率回復による売上増加額は年間数百万円規模であり、投資対効果としては十分にペイするというのがA社の実感です。

なお、厚生労働省の「人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)」を活用すれば、就業規則の多言語化や相談体制の整備にかかる費用の一部(上限57万〜72万円)が助成される可能性があります。また、自治体独自の外国人受入れ支援補助金が利用できるケースもあるため、事業所のある地域の制度を確認しておくことをおすすめします。

入居後に起きたトラブルと対処法

外国人の受入れには、想定外のトラブルがつきものです。A社でも入居後にいくつかの課題が発生しましたが、いずれも早期の対応で深刻化を防ぐことができました。ここでは、他の企業でも起こりうる典型的なトラブルと、その実践的な対処法を共有します。

トラブル1:ゴミの分別ミスによる近隣クレーム

入居から2週間後、ゴミ集積所の管理当番の住民から「分別ができていないゴミ袋がある」と管理会社経由でクレームが入りました。確認したところ、プラスチック容器を「燃えるゴミ」として出していたことが判明。ベトナムではゴミの分別習慣が日本ほど厳格ではないため、オリエンテーションで説明したものの、実際の判断に迷うケースがあったのです。

対処として、ゴミ袋の色と分別ルールを写真付きで一覧にした「ゴミ分別ポスター」をキッチンの壁に貼り、最初の1か月はバディが毎週ゴミ出しの日に一緒に確認する仕組みを導入しました。地元自治体が配布しているベトナム語版のゴミカレンダーも入手し、各自のスマートフォンにPDFを共有しました。1か月後にはクレームはなくなりました。

トラブル2:夜間の通話音による騒音問題

ベトナムの家族との電話やビデオ通話を深夜に行うことがあり、隣室の住民から「夜中に声が聞こえる」との指摘がありました。ベトナムと日本の時差は2時間で、ベトナム側の家族が夜に電話をかけてくると日本では深夜になるケースがあったのです。

対処としては、「22時以降の通話は小声で」「できればイヤホンを使う」というルールを追加し、通話用のイヤホンを会社から支給しました。また、ベトナムの家族にも通話時間帯を調整してもらうよう、本人を通じてお願いしました。文化的な背景を理解したうえで、一方的に禁止するのではなく「お互いに気持ちよく暮らすための工夫」として提案したことが、スムーズな解決につながりました。

トラブル3:ホームシックによるモチベーション低下

来日から1か月半ほど経った頃、3名のうち1名が明らかに元気をなくしている様子が見られました。バディが声をかけたところ、「家族が恋しい」「日本語がうまく通じなくてつらい」という気持ちを打ち明けてくれました。

A社では、定期面談(3か月に1回以上の義務的支援)を待たず、支援担当者がベトナム語通訳を同席させて個別面談を実施しました。また、週末に地元の国際交流イベントに参加する機会を設け、同じベトナム出身の在住者とのつながりを作りました。日本語教室への通学もサポートし、日本語能力の向上とともに自信が回復。3か月後にはすっかり笑顔が戻り、職場でも積極的にコミュニケーションを取るようになりました。

2025年の制度改正と今後の展望

特定技能制度は毎年のように見直しが加えられています。2025年4月施行の改正内容と、2027年に控える大きな制度変更についても押さえておきましょう。

2025年4月の主な変更点

2025年4月1日施行の省令改正により、受入企業に課されていた定期届出が「四半期ごと(年4回)」から「年1回(毎年4月1日〜5月31日)」に変更されました。届出名称も「特定技能外国人の受入れ状況、活動状況及び支援実施状況に関する届出」に一本化されています。届出頻度は減りましたが、届出内容が簡素化されたわけではなく、日々の支援記録の蓄積は引き続き重要です。

もう一つの重要な変更が「自治体連携の義務化」です。受入企業は、外国人が居住する市区町村から「協力確認書」を取得する必要があり、地域の多文化共生施策と連携した受入れ体制の構築が求められるようになりました。A社のケースでは、入国前に市役所の国際交流課に相談し、利用可能な日本語教室や生活支援サービスの情報を事前に得ていたことが、スムーズな定着に寄与しました。

2027年「育成就労制度」で何が変わるか

2027年4月には、現行の技能実習制度に代わる「育成就労制度」が施行される予定です。育成就労制度は、外国人材を最長3年間「育成」しながら「就労」させ、その後特定技能1号への移行を目指す設計になっています。従来の技能実習では認められていなかった転籍(転職)の要件が緩和されるため、外国人材にとっても、受入企業にとっても、より柔軟な雇用関係が構築できるようになります。

食品工場の経営者にとって重要なのは、育成就労から特定技能へのキャリアパスが一本化されることで、長期的な人材育成計画が立てやすくなるという点です。3年間の育成就労でスキルと日本語を磨いた外国人材が、そのまま特定技能1号として同じ工場で働き続けるという流れが標準化すれば、採用と育成のコストを大幅に削減できる可能性があります。

これから外国人採用を始める食品工場へのチェックリスト

最後に、本記事の内容を踏まえ、これから特定技能外国人の採用を検討する食品工場の経営者・人事担当者が確認すべきポイントを整理します。

採用前に確認すべきこと

まず、自社が特定技能「飲食料品製造業」の受入れ対象事業所であるかを確認してください。食品製造・加工を主業務とする事業所であれば該当しますが、判断に迷う場合は出入国在留管理庁や農林水産省のウェブサイトで最新の対象業種リストを確認するか、行政書士に相談しましょう。次に、食品産業特定技能協議会への加入手続きを早めに開始すること。加入には2〜4週間かかるため、採用活動と並行して進めるのが効率的です。

受入れ体制の整備で押さえるべきこと

住居の確保は入国前に完了させる必要があります。居室面積は1人あたり7.5㎡以上を確保し、生活に必要な家具・家電・Wi-Fi環境を整えておきましょう。登録支援機関への委託を検討する場合は、飲食料品製造業での実績と対応言語、地方への訪問対応の可否を重点的に確認してください。

日本人従業員への事前説明も欠かせません。外国人採用の目的と役割分担を明確に伝え、不安や疑問に丁寧に応えることで、受入れ後の職場環境が大きく変わります。バディ制度や多言語マニュアルの整備も、初期投資として確実にリターンが得られる施策です。

長期的な定着のために意識すべきこと

採用は「ゴール」ではなく「スタート」です。3か月に1回以上の定期面談を確実に実施し、生活面・仕事面の両方で困りごとがないかを継続的に把握しましょう。日本語学習の支援、地域の国際交流イベントへの参加促進、母国の祝日や宗教行事への配慮なども、定着率の向上に直結します。特定技能1号の在留期間は通算5年が上限ですが、特定技能2号への移行が認められれば在留期間の制限がなくなり、より長期的な戦力として活躍してもらえます。

よくある質問

  • Q. 特定技能外国人の採用から入国までにどれくらいの期間がかかりますか?
    A. 海外から新規に呼び寄せる場合、登録支援機関の選定から入国まで平均4〜6か月が目安です。候補者の選考に1〜2か月、在留資格認定証明書の交付申請・審査に1〜2か月、ビザ発給・渡航準備に1か月程度を見込んでおきましょう。国内在住の技能実習修了者を採用する場合は、在留資格の変更手続きのみで済むため、1〜2か月で就労開始が可能です。
  • Q. 日本語がほとんど話せない外国人でも採用できますか?
    A. 特定技能1号の要件として、日本語能力試験N4相当以上(基本的な日本語が理解できるレベル)の合格が求められています。N4は「ゆっくり話せば日常会話がある程度理解できる」水準であり、現場での指示は「やさしい日本語」や多言語マニュアルの併用で補完するのが一般的です。技能実習2号を良好に修了した方は日本語試験が免除されますが、実習中に日本語力を身につけているケースが多いです。
  • Q. 特定技能外国人が退職して他社に転職することはありますか?
    A. はい、あります。特定技能は技能実習と異なり、同じ分野内であれば転職が認められています。そのため、より条件の良い企業に移るケースは実際に発生しています。転職を防ぐためには、待遇の適正化はもちろん、職場環境や生活支援の充実による「この会社で働き続けたい」と思える環境づくりが重要です。
  • Q. 食品産業特定技能協議会への加入は無料ですか?
    A. はい、協議会への加入に費用はかかりません。農林水産省が事務局を務めており、オンラインで加入手続きが可能です。ただし、加入申請から承認まで2〜4週間かかることがあるため、採用活動の初期段階で手続きを開始することをおすすめします。
  • Q. 特定技能外国人にも日本人と同等の給与を支払う必要がありますか?
    A. はい。特定技能外国人の報酬額は、「日本人が従事する場合の報酬の額と同等以上」であることが法律上の要件です。同じ業務を行う日本人従業員がいる場合はその賃金水準と同等以上に、いない場合は賃金規程や地域の同業種の賃金水準を参考に合理的な額を設定する必要があります。最低賃金を下回ることは当然ながら違法です。
  • Q. 3名程度の少人数でも特定技能外国人を採用するメリットはありますか?
    A. あります。本記事のモデルケースのように、慢性的に人員が不足しているラインに3名を配置するだけで、稼働率が大幅に回復するケースは珍しくありません。少人数であれば住居手配や教育体制の整備にかかる負担も管理しやすく、初めての外国人受入れとしてはむしろ適切な規模といえます。まずは少人数で体制を構築し、ノウハウが蓄積されてから追加採用を検討するのが王道です。

初心者のための用語集

    • 特定技能1号
      相当程度の知識または経験を必要とする技能を持つ外国人に付与される在留資格です。在留期間は通算5年が上限で、家族の帯同は原則として認められていません。受入企業には義務的支援の実施が求められます。
    • 特定技能2号
      熟練した技能を持つ外国人に付与される在留資格です。在留期間の更新に上限がなく、条件を満たせば家族の帯同も可能です。2023年6月に対象分野が大幅に拡大され、飲食料品製造業も対象に含まれています。
    • 登録支援機関
      特定技能1号外国人への義務的支援を、受入企業に代わって実施することができる機関です。出入国在留管理庁への登録が必要で、支援委託費の相場は1名あたり月額2万〜4万円程度です。
  • 食品産業特定技能協議会
    農林水産省が事務局を務める、飲食料品製造業と外食業の特定技能に関する協議会です。飲食料品製造業で特定技能外国人を受け入れるすべての企業と、全部支援をする登録支援機関の加入が義務づけられています。
  • 技能測定試験
    特定技能1号の在留資格を取得するために合格が必要な試験です。飲食料品製造業の試験はOTAFF(一般財団法人外国人食品産業技能評価機構)が実施しており、学科試験と実技試験で構成されます。合格基準は100点満点中65点以上です。
  • 育成就労制度
    2027年4月に施行予定の新しい在留資格制度で、現行の技能実習制度に代わるものです。最長3年の在留期間を経て特定技能1号への移行を目指します。技能実習で制限されていた転籍(転職)の要件が緩和される予定です。
  • 義務的支援
    特定技能1号外国人に対して受入企業が必ず実施しなければならない10項目の支援です。事前ガイダンス、出入国時の送迎、住居確保支援、生活オリエンテーション、公的手続きの同行、日本語学習支援、相談・苦情対応、日本人との交流促進、転職支援、定期面談が含まれます。

参考サイト

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